縫い物作戦継続中。
入隊日1日目の夕刻から行っている縫い作戦は、
そろそろ潮時を迎えていた。
もう夜になったのだ。
集合の号令とともに、狭い廊下に一列に並ぶ。
ここでひとつ覚えておいてほしいのだが、
新隊員のわたしは第105教育大隊第二中隊に 配属された。
第105教育大隊は第一中隊と第二中隊の集まりだ。
それぞれの中隊に約40名の隊員がいる。
すなわち、学校のクラス2個分で大隊、一個分で中隊だ。
クラス一個分の中隊は40名がそれぞれ4班にわかれている。
10名で一班だ。
これをまとめると
10名=一班<40名=中隊<80名=教育大隊となる。
我々は10月という季節はずれの入隊者で、「季節隊員」と呼ばれる、
4月入隊者とはちがったニュアンスで呼ばれる。
世間の波にのれず、中途半端な時期に就職した、
ちょっとおちこぼれなのだ。
閑話休題。
とにかく40名が廊下に並んだ。
そこで始まったのが、
「アイロンのかけかた」
である。
「アイロンとはなにか」と、班長にたずねられる。
ちなみに10名に班長が一人つく。
40名なので、森2曹含めて4人の(鬼)班長がいる。
ひょろっこい奴が指名されて、答える。
「あ・・・アイアン」
「ちかい」
そうか?
「アイロンとは、英語でプレスのことだ。
つまり押し付けるということだな。俺の袖をみろ」
袖、もしくは肩から手首のラインが、キッチリと鋭くアイロンされていた。
「毎日これくらいやれ。やり方は今から教える」と、
廊下でアイロン講座が始まった。
襟から袖から肩から、ポケットから、すべてアイロンされつくしている。
「一班に一台アイロンをわたす。
全員もらった戦闘服に縫い物とアイロンを本日おこなうように」
と言って、一時解散となった。
また、居室での縫い物がはじまった。アイロンの順番はなかなかこない。
アイロンをかけた戦闘服のチェックもあるのだ。
順番としては、
名札をつけた後にアイロンをかけなければいけない。逆の順でやると、
せっかくアイロンをかけた戦闘服がしわしわになるのだ。
こんなせせこましい作業を、みんなベットの上でおこないながら、
なんとなく仲良くなっていった。
自衛隊という特別な空気と、気が入っているようで抜けている作業のおかげだろう。
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つづく。