10月に入隊し、あれよあれよという間に
11月を迎えた頃、
結構日々の業務がレールにのって走り出していたのだが、
マンネリな日はなかった。
日々新しい何かを身体と頭に詰め込まれ、
我々は着実に兵隊になっていった。
ただ勘違いしてほしくないのだが、屈強な精神と肉体を手に入れたわけではない。
その辺の兄ちゃんが、ちょっと運動できるようになり、銃を扱うようになったくらいだ。
入隊して気がつくのは、普通の人しかいない、ということだ。
たしかにミリタリーマニアはいるのだが、ごく少数にとどまっているし、
なんとなく部活動に似ている。
訓練も駐屯地内の拓けた土地で銃をもって行進したり、
ほふくから立ち上がって走り出したり、1時間くらいマラソンしたり、で日々が過ぎていく。
そんな折に「富士に行く」という予定が近づいていた。
必要になる手袋など、自腹で買った。
支給される手袋など無いのだ。せいぜい軍手だ。
きちんと皮の手袋とか、暖かい着物など自腹でそろえなければ、冬の富士では
生き残れない。
2夜3日の予定で、我々は富士に向かってトラックの荷台に詰め込まれた。
トラックの荷台の中、両脇の壁に簡単な木でできたベンチ?があり、そこに肩を寄せ合い座る。
荷台の中央はわれわれの荷物やテントなどの備品で山となっている。
ホロはかけない。
むき出しの我々はトラックごと
高速道路に突入し、
トラックごと
衆人環視にさらされるのだ。
寒い。
風が強く、
冷たく、
寒い。
両足に挟む銃が冷たい。
ようやく富士に到着した時は、みんな一仕事終えた顔になっていた。
仕事は今から始まるのだが。
つづく