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KYOとおひげのサバイバル日記~3.11東北地方太平洋沖地震発生!!~
【3月14日(月)その1】
ーおひげー
この頃から地震当日の事が思い出せない。
日常とあまりにも違う体を違う。頭を使う。
で、寝て起きると曜日や日にちの感覚がない。
きっとこれは夢で、目が覚めるといつもの寝坊の俺がボサボサの髪で起
きるに違いない…
夢ならそろそろウルトラマンやアンパンマンや仮面ライダーが自衛隊に
混じって復旧作業するはずなのにな~ほっぺたをツネリながらそんな事
を考えて床についた。
朝方4:00を回った頃いつもは朝までトイレに行かない長男がトイレ
に起きた。まだ日の出には少し早く、雪も地面に積もっていた。
リビングで川の字になって寝ていた長男(KYO)はドアを開けると
「なんで玄関空いてるの!」寝ぼけながら俺は
「爺さんも外に立ちションじゃない?」と、
一応爺さんの部屋を覗いたKYOは「ああそうみたい」といって玄関から
外に出て行った。
次の瞬間外から「親父!!!!!!早く」
寝ぼけていた俺は一気に目が覚めた。
しかし枕元に置いていた懐中電灯はKYOが外に持って行って真っ暗…
メガネ…メガネ…メガネ…
さらに外から「早くこいっていってんだろー」と怒りの声。
メガネをウルトラセブンのように装着し、外へ飛び出す(本当は靴も履き
たかったがやはり暗闇で見えず…ぶん殴られそうな勢いなので裸足で飛び
出た)懐中電灯の方に走ると、庭の柿の木の下であぐらをかいてうな垂れ、
雪まみれの爺さんが浮かび上がっている。(因にKYOは舞台慣れしているの
でこちらに懐中電灯を向けたりしない。
こちらの目標物を照らしていたのですぐ場所も状況もわかったのだ)
一瞬鳥肌が立った…。
「大丈夫?」と聞くと「大丈夫じゃない」と返事が返って来て生きてる事
を確認した。
さすがに次男(レオト)も起きて来た。レオトに「懐中電灯で進行方向を
照らせ!」俺とKYOは爺さんの手を肩に回し部屋まで連れて行った。
急いで、服を脱がせ、夕方ポットに入れたお湯(正確には寒いのでぬるま湯)
で体を拭き、亡くなった母が人は死ぬ時足から冷たくなって
行くと言っていたのを思い出し、氷のように冷たくなった足を1時間以上
擦った。やるだけの事はやった…。
爺さんも眠りにつきリビングに戻った時は5:30。
雪の降る3月14日が薄らと明け始めて来た。そう今日はホワイトデー…
心拍数が異常に上がってる俺はもう眠れない。
横には発見から足を擦っている間ずっと灯りを照らし続けたレオトも
眠れない様子。(ちなみにKYOは一仕事終わっていびきをかいて寝ているw)
あーいつもの時間に朝一立ちションに行っていたら…
レオトが「お父さんにもマッサージしてあげる!」と言ってくれた。
彼のマッサージは魔法のマッサージ。
うつ伏せになった背中に乗って100歩足踏みをしてくれる。
いつもそれをすると毎回してもらいたい俺はほうれん草を食べたポパイの様に
なるという仕組み。
きっと疲れ果てた顔をしていたんだろうな。彼からマッサージを志願して来た。
そっと布団にうつ伏せになるといつもと様子が違う。
10歩足踏みで「いーち」20歩で「にー」300歩で「さんじゅー」
まさかな…600歩で「ろくじゅー」こいつ俺の誕生日にさえサービスと言って
300歩だけだったのに1000歩行くのか?
と思ったら声だして泣いてしまった。
「ひゃーく」という名の1000歩のマッサージが終わった。
そしてこの瞬間から、
今回の被災で
くよくよしない(泣かない)。
やれる事は全力でやる。
明るく過ごす。
そして生かされた命を大切に悔いのないよう活かす。
事を誓った。
正に魔法のマッサージ。
一晩中流れていたラジオからはラジオ体操が流れて来た。
昨日までは「こんな時にラジオ体操かよ!」とかほんの少し
思っていたのですが…
隣の部屋には奇跡の生還をした爺さんが、後ろにはいびきをかいて
熟睡しているKYOが、いましたが
俺とレオトはおかまい無しに大きい声で唄った。
新しい朝が来た
希望の朝だ
喜びに胸を開け
大空 あおげ…
つづく