ゴリムは言った


Updated By : September 5, 2018 7:50:10 PM JST

ゴリムは言った


「われらが友人はきわめて断定的だったはずだぞ、ガリオン。かれはわれわれは南へ行く途中でプロルグに立ち寄らねばならんと言ったんだ。なぜなら、ここで起きることになっているなにかが起きるからだ」
「それはぼくたちがいないと起きないのか?」ガリオンは問いつめた。「ぼ避孕方法くたちはこの洞窟をへっぴり腰で進んでいるだけじゃないか。そのすきにザンドラマスはぼくの息子を連れて、どんどんぼくたちの手の届かないところへ遠ざかっていくんだ」
「あれはなんですか?」後方からエランドが突然たずねた。「なにかが聞こえたようでしたけど」
 かれらは立ち止まって耳をすました。耳をそばだてると、ベルガラスのたいまつのじりじり燃える音が、急にばかでかく聞こえた。ガリオンは闇のなかへ意識を伸ばして、きまぐれな物音をつかまえようとした。闇のどこかでこだまする緩慢な水のしたたり。岩の割れ目をつたいおりて、物悲しい伴奏をつけている空気のかすかなためいき。そのときガリオンはかすかな歌声を聞き取った。妙に不調和ながら、ウルへの深い敬意をあらわす賛歌のコーラスが、五千余年にわたってこの薄暗い洞窟に反響しつづけているのだ。
「ああ、ウルゴ人たちだ」ベルガラスが満足そうに言った。「プロルグはもうすぐだぞ。さあ、ここで起きることになっているのがどんなことなのかつきとめようじゃないか」
 さらに一マイルばかり進むと、通路が急に下り坂になって、一行を地中の奥深くへと連れていった。
「ヤック!」前方のどこからか鋭い声がとんだ。「タチャ・ヴェルク?」
「ベルガラス、ユン・バク」老魔術師は冷静に誰何《すいか》に応じた。
「ベルガラス?」声はおどろいたようだった。「ザジェッ居屋再按揭ク・カリグ、ベルガラス?」
「マレケグ・ゴリム、ユン・ザジェック」
「ヴィード・モ。マー・イシュム・ウルゴ」
 ベルガラスはたいまつを消した。ウルゴの歩哨が燐光を放つ木鉢を高くかかげもって近づいてきた。
「ヤドホー、ベルガラス。グロージャ・ウル」
「ヤドホー」老人はその儀式ばった挨拶に答えた。「グロージャ・ウル」
 背が低く肩幅の広いウルゴ人は短く一礼してから、くるりと向きをかえ、かれらを薄暗い通路の奥へと案内した。歩哨のかかげ持つ木鉢から緑がかった静止した輝きがもれて、暗い通路に気味の悪い明かりを広げ、かれらの顔を幽霊じみた色に染めた。さらに一マイルほど行くと、通路は広がってだだっぴろい洞窟になった。ウルゴ人の考案したその不思議な冷たい光が、石壁の上方にくりぬかれた無数の穴から弱い照明をかれらに向かってまたたかせている。一行は用心深く細い岩棚をつたって、洞窟の石壁から切り出した石段の下へ近づいた。案内人が短くベルガラスに話しかけた。
「馬はここへおいていかねばならないようだ」老人は言った。
「わたしが馬とここへ残りましょう」ダーニクが申し出た。
「いや。馬はウルゴ人たちが見てくれるよ。階段をのぼろう」ベルガラスは急な石段をのぼりはじめた。
 かれらはだまって階段をのぼっていった。足音が洞窟のはるか彼方からうつろにはねかえってくる。
「そんなにはじから身をのりださないでちょうだい、エランド」半分ほどのぼったとき、ポルガラが言った。
「どのくらい深いか確かめたかっただけです」エランドは答えた。「下に水があるって知ってましたか?」
「だから身をのりださないでと言ってるのよ」
 エランドはふっとほほえんで、のぼりつづけた。
 階段のてっぺんにつくと、地下の暗い奈落のはじを避けて数百ヤード進み、通路のひとつにはいった。そこには岩からくりぬいた小部屋がいくつもあって、ウルゴ人たちが生活したり働いたりしていた。その通路の向こうに薄暗く照らされたゴリムの洞窟があった。壮厳な白い円柱が、ゴリムの湖とゴリムの島と、ピラミッド型の不思議な家を囲んでいる。湖を横切る大理石の土手道のつきあたりに、ウルゴのゴリムがいつものように白い長衣を着て、こちらをうかがっていた。「ベルガラスか?」かれはふるえる声で呼びかけた。「あんたか?」
「そうだ。わしだよ、聖なるお人」老人は答えた。「わしがまた現われることは察しがついていたんじゃないかね」
「ようこそ、友よ」
 ベルガラスは土手道に向かって歩き出そうとした。が、セ・ネドラが茜《あかね》色の巻毛をふりたてて、わきを矢のようにすりぬけ、両腕をのばしてゴリムのほうへかけだしていった。
「セ・ネドラ?」セ・ネドラが首にしがみついてきたので、ゴリムはあっけにとられて目をぱちくりさせた。
「ああ、聖なるゴリム」彼女はゴリムの肩に顔をうずめて泣きじゃくった。「だれかがわたしの赤ちゃんを連れていってしまったのよ」
「なんだって?」ゴリムは叫んだ。
 ガリオンはセ・ネドラのそばへ行こうと、ほとんど反射的に土手道を渡りはじめていたが、ポルガラが腕をおさえてとめた。「まだ行ってはだめよ、ディア」
「しかし――」
「たぶんセ・ネドラにとっては、これこそ必要なことなのよ、ガリオン」
「そう言うけどね、ポルおばさん、泣いているんだよ」
「そうね、ディア。わたしはこれを待っていたの。セ・ネドラがもとの彼女に戻るには、苦悩を吐き出すことが必要なのよ」
 ゴリムは小柄な王妃を両腕に抱いて、やわらかななだめるような口調でささやきかけていた。セ・ネドラの最初の涙の嵐がおさまると、かれはしわ深い顔をあげて、たずねた。「すべてが起きたのはいつだね?」
「去年の夏の終わりだ」ベルガラスが答えた。「すこぶるこみいった話でね」
「では家におはいり、皆の衆」。「召使いたちが食べ物と飲み物を用意する。食べながら話せばよい」
 かれらはゴリムの島に建つピラミッド型の家にぞろぞろとはいって、石の腰掛けとテーブルのある大きな中央の部屋に足を踏みいれた。天井や、内側にむかってカーブした風変わりな壁から鎖がぶらさがり、その先端に輝く水晶ランプがさがっている。ゴリムは物静かな召使いのひとりに短く話しかけてから、セ・ネドラの肩を抱いたままふりかえって、一同に言った。「すわってくれ、皆の衆」
 かれらが石のテーブルにつくと、ゴリムの召使いのひとりが磨きこんだクリスタルの酒杯と、強烈なウルゴの飲み物のはいった瓶を載せた盆を運んできた。
「さてと」気高い老翁は口を開いた。「なにがあったのだ?」

Action

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Author : れないようにし | 9/5/18 7:50 PM | Public
Tags : Music , Travel , Children , Transport , Film & Animation , Health
Contents Data : 174 0 0

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